市場分析

「ディストリビューションが増えたら危険」は本当か? 日本市場5年・3指数をバックテストして見えたディストリビューション・デーとフォロースルー・デーの役割

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MARKET ANALYSIS

「ディストリビューションが増えたら危険」は本当か? 日本市場5年・3指数をバックテストして見えたディストリビューション・デーとフォロースルー・デーの役割

オニールのDD・FTDの考え方を、日本市場ではどう活用できるのか。日経225・TOPIX・東証グロース250の約5年間を使って検証しました。

皆さん、こんにちは。AS Windです。

CAN-SLIMで市場環境を見るとき、いの一番に出てくる重要な指標がディストリビューション・デー(以下DD)です。

ウィリアム・オニールは、市場全体の値動きと出来高の変化から機関投資家による売り圧力を捉え、その蓄積を市場環境判断に利用しました。DDは、単に指数が下落した日を見るのではなく、価格と市場活動の組み合わせから売り圧力を捉えようとする考え方です。

ところで、この考え方を日本市場で使う場合、DDが5個、6個と増えてきたら、本当にその後の市場は下落しやすくなるんでしょうか??

また、対極的に定義された下落・調整局面からの転換を確認するフォロースルー・デー(以下FTD)は、日本市場でも実際にトレンドの変化を捉えているんでしょうか??

今回は、オニールのDD・FTDの考え方を日本市場でどのように活用できるのか、という観点から検証しました。

対象は2021年9月から2026年9月までの約5年間。日経225・TOPIX・東証グロース250を混ぜずにそれぞれ独立してバックテストしてみました。

最初に考えていたのは、「DDが増えるほど市場の売り圧力が蓄積し、その後の下落リスクも高まるのではないか」というシンプルな仮説です。

ところが実際に検証してみると、残念ながら結果はそれほど単純ではありませんでした。。

DDが増えるほど、その後の市場は悪くなるのか

直近25営業日のDD数を、0 / 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 /

8以上に分け、それぞれの日から5・10・20・60営業日後の市場を調べました。

DD数別・20営業日後平均リターン
Fig1:DD数別・20営業日後平均リターン

結果を見ると、DDが増えるほど、その後のリターンが段階的に悪化する形にはなっていませんね。

日経225やTOPIXでは、DDが5~7まで増えていても、その後20営業日の平均リターンがプラスとなるケースもありました。東証グロース250でも、DD数とその後のリターンは単純な右肩下がりにはなってません。

今回の約5年間では、「DDが5個になったら危険」「DDが増えるほどその後は下がりやすい」という単純な関係は確認できませんでした。

短期間にDDが集中すると危険なのか

次に、直近5営業日にDDが何回増えたかを、0~1回 / 2回 /

3回以上に分類しました。

DD蓄積速度別・20営業日後平均リターン
Fig2:DD蓄積速度別・20営業日後平均リターン

日経225の20営業日後平均リターンは、0~1回が+1.23%、2回が+2.17%、3回以上が+3.69%。TOPIXでは+1.11%、+1.60%、+2.86%でした。

東証グロース250では0~2回のグループはマイナスでしたが、3回以上では+2.50%となりました。

少なくとも今回のデータでは、短期間にDDが集中したから、その後さらに下落するという関係も確認できませんでした。

残念ながら市場はそんなに単純じゃないってことですね。。(泣)

同じDD数でも、中身は同じではない

現在使用しているDDの判定では、DDは基本的に25営業日の対象期間を持たせるようにしています。ただし、DD発生日の終値から価格が+5%回復すると、そのDDは25営業日を待たずに失効する設定です。

今回は現在有効なDDを、FTDより前の下落・調整局面から残る「旧局面DD」と、FTD成立後に新しく発生した「現上昇局面DD」に分解しました。

旧局面DDと現上昇局面DDの概念図
Fig3:旧局面DDと現上昇局面DDの概念図

同じ「DDが5個」でも、FTD成立直後なら前の下落局面から残ったDDが多い可能性があります。一方、FTDから長い時間が経過した後なら、現在の上昇局面で新しく発生したDDが中心になってきます。

つまり、DD数は現在の売り圧力だけではなく、直近の市場ストレスの履歴も含んでいます。

蓄積したDDは、その後どこへ行くのか

ところでDDが市場の売り圧力やストレスを表しているなら、DDが蓄積した後、その圧力はどこかで下落として表れるように思います。

そこでDDが5以上に到達した局面から60営業日を追跡し、−5%・−7%・−10%下落、最大下落率、DD数のピークアウト、価格回復によるDD失効を調べました。

結果として、DDの蓄積後には大きく2つの経路がありました。

ひとつは、その後の価格下落として市場ストレスが顕在化するケース。もうひとつは、市場が上昇し、DD発生日から+5%回復することで過去のDDが失効していくケースです。

日経225やTOPIXでは「価格回復による吸収」がかなり見られました。一方、東証グロース250では、高DD後に−7%や−10%の下落へ進むケースが多く見られました。

当初は東証グロース250ではDDがより強く機能しているのではないかと思ったんですが、ここには今回バックテストした5年間の長期トレンドの影響がありました。

DDより重要だった「長期トレンドとの組み合わせ」

今回の約5年間では、日経225とTOPIXは長期的には上昇方向、一方で東証グロース250は長期的に弱い期間を多く含んでいました。

そのため、単純に3指数の高DD後を比較すると、DDの影響と長期トレンドの影響が混ざっていると気づきました。

そこで200日移動平均線を使い、長期トレンドを固定して再検証しました。

長期トレンド別|通常時と高DD後の−7%到達率
Fig4:長期トレンド別|通常時と高DD後の−7%到達率

ここでやっと面白い傾向が出てきました。200日移動平均線が上向きで、株価も200日移動平均線より上にある状態では、日経225が25.7%→26.5%、TOPIXが17.4%→18.4%と、高DDになっても−7%到達率はほとんど変わりませんでした。

ところが、200日移動平均線は上向きなのに株価が200日移動平均線を下回っている状態では、日経225が17.8%→43.8%、TOPIXが21.6%→46.2%、東証グロース250が36.5%→70.8%まで上昇しました。

つまり今回の5年間では、DDが何個あるかだけでなくて、「どの長期トレンド環境でDDが蓄積しているか」が重要だったということです。

今回の結果から、DDが5個、6個といった絶対数だけで市場を判断するより、長期トレンド、現在価格の位置、DDの蓄積を組み合わせて見る方が、効果的であるといえます。

特に「200日移動平均線はまだ上向きだが、株価が200日移動平均線を割り、その局面でDDが増えている」という状態は注視したい局面です。

FTDは本当にトレンド転換を確認しているのか

FTDについても、FTD成立後の20営業日・60営業日リターンだけから、その後の市場方向を安定して予測できる特徴は確認できませんでした。

そこで、正式FTDの前20営業日と、FTD後20・40営業日の価格の傾きを比較しました。

正式FTD前後の価格トレンド
Fig5:正式FTD前後の価格トレンド

FTD前20営業日の平均価格傾斜は、日経225−0.546%/営業日、TOPIX−0.498%/営業日、東証グロース250−0.493%/営業日でした。

FTD後20営業日では、日経225−0.026%/営業日、TOPIX−0.079%/営業日、東証グロース250+0.253%/営業日まで改善しています。

FTD前20営業日が下降だったケースで、40営業日後に下降から上昇へ傾斜が反転した割合は、日経22550%、TOPIX60%、東証グロース250

83.3%でした。

また、FTD後20営業日で20日移動平均線の傾きが改善した割合は、日経22575%、TOPIX80%、東証グロース250

87.5%でした。

今回のデータではFTDに、下落・調整局面から局所的な上昇方向への転換を確認する機能がある程度見られました。ただし、すべてのFTDがそのまま長期上昇トレンドにつながったわけではないです。

DDとFTDを組み合わせれば、未来を予測できるのか

今までの流れで「DDで市場のストレスを捉えて、FTDで転換を確認できるなら、2つを組み合わせれば、その後の相場も予測できるのでは?」と思いますよね。

そこで、DDだけ、FTDだけ、DDとFTDを組み合わせた場合の3パターンを比較しました。

2021年9月~2024年12月を学習期間、2025年1月以降をテスト期間として、20営業日後と60営業日後の市場をどの程度説明できるかを比較しています。

結果は少し意外なものでした。

DDとFTDを組み合わせた方が良くなったのは18比較中2ケースだけでした。さらに、20営業日後・60営業日後のリターンについて、テスト期間の決定係数は3指数・3パターンすべてで0未満でした。

つまり今回の検証では、DDとFTDを組み合わせても、その後20~60営業日のリターンを安定して予測できるとは確認できなかったんです。どんどん期待が萎んでいく。。

とはいえDDもFTDも市場を見るうえで意味のある情報です。ただし、「DDが増えたから下がる」「FTDが出たから上がる」「DDとFTDを組み合わせれば未来が分かる」というものではなさそうです。

DDとFTDは、未来を当てるためというより、今の市場がどの局面にいるのかを判断するために使う。

この捉え方の方が、今回の検証ではしっくりきますね。

5年間の検証で見えてきたDDとFTDの役割

最初に知りたかったのは、「オニールのDDの考え方を、日本市場ではどう使えばいいのか?」ということでした。

その答えは、残念ながら「DDが何個なら危険」という単純なものではありませんでした。

今回の約5年間・3指数の検証から、私としてはDDとFTDを次のように捉えています。

・DDの数だけで市場を判断しない ・DDは市場ストレスの履歴として見る
・DDは長期トレンドと現在価格の位置を合わせて見る
・FTDは「上がるサイン」ではなく、下落・調整から上昇方向への転換確認として見る

DDとFTDは「点」ではなく、市場の流れで見る

今回の検証からDDとFTDは別々のシグナルとして見るより、市場の流れの中で見る方が分かりやすくなります。

長期トレンド ↓ DDが蓄積する ↓ 価格構造が悪化する ↓ 市場が底を探る ↓

FTDが成立する ↓ 上昇方向への転換を確認する ↓

その後、新しいDDが再発していないかを見る ↓

上昇継続なのか、再び崩れるのかを判断する

という展開です。

この中でDDは、市場にどの程度ストレスがかかってきたのかを見る情報。

FTDは、そのストレス局面から上昇方向へ転換し始めたことを確認する情報です。

今回の検証から、日本市場ではこう使いたい

今回の検証を踏まえて、今後はDDを単独の警戒ラインとして扱うのではなく、市場環境の中のひとつの情報として使っていきたいと思います。

特に注目したいのは、200日移動平均線が上向きなのに、株価が200日移動平均線を割り、そこでDDが蓄積している局面です。

反対に、200日移動平均線が上向きで、株価もその上にある強い上昇トレンドでは、DDが5以上あっても、大型株指数では通常時との差はほとんどありません。

FTDについては、成立したことだけで安心するのではなく、本当に価格トレンドが改善しているか、そしてFTD後に新しいDDが再び増えていないかを確認していきます。

CAN-SLIMを学んでいると、「DDが何個になったら警戒するのか」「FTDが出たら買っていいのか」と、どうしても数字やシグナルそのものに目が向きます。

私自身も今回、そこから検証を始めました。

でも実際に日本市場の約5年間を調べてみると、単純な個数だけでは説明できないことがかなりありました。

オニールの考え方を否定するのでも、そのまま当てはめるのでもなく、なぜその指標を見るのかを理解したうえで、日本市場のデータで確かめて使う。

これからもそういう形でCAN-SLIMを検証していきたいと思います。

まとめ

今回、2021年9月から2026年9月までの約5年間について、日経225・TOPIX・東証グロース250を使ってDDとFTDを検証しました。

結果をまとめると、

・DDが増えるほど、その後の市場が悪化する単純な関係は確認できなかった
・DDが短期間に集中しても、その後の下落を直接予測するものではなかった
・DD数には、前の局面から残ったDDと現在の上昇局面で発生したDDが混在する
・高DDの意味は長期トレンドによって大きく変わった
・特に、200日移動平均線が上向きなのに株価がその下へ落ち、高DDが重なった局面では下振れリスクが高まった
・FTDは将来上昇の保証ではないが、局所的なトレンド転換を確認する機能は一定程度見られた
・DDとFTDを組み合わせても、20~60営業日後のリターンを安定して予測することはできなかった

いかがでしたでしょうか?

最初は「ディストリビューションが増えたら危険なのか?」というシンプルな疑問から始めた検証でした。

最終的に見えてきたのは、DDの「個数」そのものよりも、今どのトレンドにいて、どこでDDが発生し、その後FTDを経て市場がどう変化しているのかを見ることが重要だということです。

CAN-SLIMの市場判断は、表面的なひとつの数字だけで答えが出るものではありません。

だからこそ、実際の日本市場のデータで検証しながら、自分の市場判断にどう取り入れるかを今後も考えていきたいと思います。

本記事は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載情報は将来の成果を保証するものではなく、分析時点の情報であり、その後変化する可能性があります。

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