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日本で割安投資が流行る理由とは。
オニールの「CAN-SLIM」に従って銘柄を選択すると、PERは30倍以下になる事はなく、場合によっては100倍を超えることも珍しくありません。PBRも1倍を割るような事はなく、20倍、30倍というのがザラです。
オニールの投資方法は100%成長株を狙ったものでトレンドフォローの投資方法です。
一方で世の中の投資手法を見てみると、いわゆる割安株投資が幅を効かせています。実際の株価が企業価値よりも相当低くなった時を狙って買う。という手法です。
これは「オマハの賢人」ウォーレン・バフェットの影響が大きいのではないでしょうか?
バフェットの師であるベンジャミン・グレアムという投資家がおりますが、彼の有名な著作「賢明なる投資家」(パンローリング)という本をご存知な方も多いはずです。
この本はバフェットに輪をかけてガチガチの割安投資のお手本となる教科書です。徹底的に低PBR,低PERにこだわり抜いています。
しかしバフェットはグレアムの割安投資では大きく儲けられないと悟り、もう一人の師であるフィリップ・A・フィッシャーの成長株投資の考え方を組み合わせることで巨万の富を築いたのです。
フィリップ・A・フィッシャーの考え方については彼の著書「フィッシャーの「超」成長株投資 -普通株で普通でない利益を得るために」(フォレスト出版)をご覧頂くといいです。(題名からして凄いですね。)
バフェットの投資手法を見ていると必ずしも割安な指標の銘柄を購入しているわけではありません。
しかし、なぜかバフェット=割安という考え方が日本では定着しているように思います。
これは投資に関する情報を提供する側がバフェットの投資方法を強調するあまりに定着してしまったイメージのように思います。また、素人投資家にとっても非常に安全な響きのある投資方法だと思います。安く買って高く売る。当たり前といえば当たり前ですからね。
かくいう私も割安投資の信奉者でした。しかし投資結果は惨憺たるものでした。割安に買ったはいいけど上がりもしない。たまに利益は出るけど微々たるもの。PER5倍、PBR0.6倍で底だと思って買ったら、そこからガンガン下がって唖然とする。。。
皆さんも思い当たるところがあるんじゃないでしょうか?
オニールの投資手法とは。
そんな私が「オニールの成長株発掘法」(パンローリング)を見て度肝を抜かれたのは当たり前かもしれません。なにせ、新高値をつけた株を買えというのですから!
割安投資の場合、大抵底をついた(と思っている)ところを狙うのがセオリーかと思いますが、オニールは未知の領域に到達したところからさらに上を狙えというのです。
オニールはまだ無名の頃、抜群にいい成績を上げているファンドの目論見書を読み漁り、彼らが新高値で買いに入っていることを発見したそうです。
そこから研鑽を重ねて過去の爆上げ銘柄を調べ上げて、新高値で買うことが投資で成功することだと確信するに至ります。そこからの実績は言うまでもありません。
ジャックD・シュワッガーの著作「マーケットの魔術師」(パンローリング)の中で伝説の投資家と呼ばれるまでになったのですから。
私も半信半疑な状態からCAN-SLIMでスクリーニングをし、オニールの教えに従って新高値を超えたところで恐る恐る買いに入ったところ、どの銘柄も今まで見たことがない程の上昇を見せました。結果を見て「これは事実だ」と確信に至った次第です。
割安投資に洗脳された私の脳では事実を見るまでは中々信じられない事でした。「オニールの成長株発掘法」(パンローリング)には割安株投資を行ってはいけない理由も書いていますが、実際に自分の中で割安に至る過程をシミュレーションしてみたところ、そういう事か。というのがわかってきました。
以下に数字を簡略化して理解しやすい形でシミュレーションをした内容を紹介します。
割安投資のシミュレーション
この状況でPERは1株あたり利益が1なのでPER50倍です。
この状況でPERは1株あたり利益が1なのでPER100倍です。
この状況でPERは1株あたり利益が2なのでPER60倍です。
この状況でPERは1株あたり利益が2.5なのでPER40倍です。
この状況でPERは1株あたり利益が2.5なのでPER30倍です。
この状況でPERは1株あたり利益が4なのでPER10倍です。
この状況でPERは1株あたり利益が2なのでPER10倍です。
いかがでしょう、いかにもありがちな展開ではないでしょうか?
本当の買いのタイミングとは?
割安投資を考えた場合、スクリーニング条件(例えばPER15倍以下)にこのA社が引っかかってくるのはシーン6の段階からです。
既にPER10倍で好決算を続ける優良会社です。ピークの株価からは3分の1になっています。しかも事業拡大に向けて新たな投資も考えているとなれば「ここが底かな」と思いたくなります。
しかしシーン7にかけて株価はここから50%下がります。なんでー???というのが心情でしょう。
また、シーン7で強気なIR(そもそも悲観的なIRなんてそんなにありませんが。)を見て「よーし、今度こそ上がるぞー!」と思いますが、この投資が成功するかどうかわかりません。
すなわち株価上昇が確約されたわけではないという事です。
こうして見ていくと、A社を買うタイミングはシーン1か2なんです。
この段階では事業の伸び始めですから確実に上昇します。シーン2では既にPERが100倍です。しかし、ここから株価は20%伸びています。
シーン1の段階で買っていたら、PER50倍の状態から最大で120%の利益が出たことになります。
あくまでもシミュレーションなので全てがこの通りとは言いません。
しかし、成長期の銘柄に比べて割安な銘柄が上昇するには、よほど大きな事業転換や経営者の変更などのドラスチックな要素が必要となってきます。
CAN-SLIMにおいてもNの要素は、「新製品、新経営陣、新高値」となっています。
最後に
新高値である事は株価上昇には必須です。
割安株の場合、株価が上がってきたら売ろうと待ち構えている「塩漬け投資家」がわんさかいます。この人達の売りを呑み込んでさらに上に向かっていくのは相当なパワーが必要です。
それに対して新高値は損している人がいない状態です。利益確定をしない限り青天井で伸びていきます。
これを理解した私は以後、一切割安投資はやらないと決めました。割安投資を考えている方は是非一度、「オニールの成長株発掘法」(パンローリング)をご覧になってみて下さい。オニールの説得力のある文章の方がより納得されると思います。
とはいえ割安株投資を全面的に否定するつもりはありません。
実際にバリバリの割安投資家のベンジャミン・グレアムは大成功した伝説の投資家です。
個々人それぞれに投資スタイルの向き不向きがあると思いますので参考にして頂ければと思います。