目次
はじめに
CAN-SLIM投資において売りの判断は非常にシンプル。
基本的に+20%の利益確定と-8%の損切りです。
他の記事で買いのタイミングについて述べていますが、オニールは適切なCAN-SLIM分析で適切なテクニカルタイミングで買いをした銘柄は-8%より下落はない。としています。
ですが、なかなか適切なタイミングで買えたかを自信をもって判断できるかというと非常に難しい問題です。
また、+20%で利益確定を機械的に実施してしまうと、その後の上昇を逃してしまうことにもつながってしまいます。
私は過去の経験からオニールの売りの法則に独自の解釈を加えて「売りのタイミング」「損切りのタイミング」を判断しています。
今回はその「AS Wind流 売りの戦略と売りのタイミング」について紹介したいと思います。
株の格言からみる基本的な考え方
株の世界では色々な格言がありますね。その中でも売りに関する格言「利食い千人力」「損小利大」は言いえて妙なところがあるなと思います。
「利食い千人力」は利が乗ったら確定することの大事さを言っています。一方で「損小利大」は利が乗ったら大きくのばし、損は早目に切りましょう。ということを言っている訳です。
売りの格言の実現には買いの戦略が大事
これらの言葉は実に良いことを言っているのですが、注意しなければならないのは買いの戦略とセットで考えなければいけないということです。
「コツコツドカン」というのもありますが、コツコツ利確してある時ドカンと損をする。儲からない典型のパターンです。このパターンをよくする人はもしかしたら「利食い千人力」を実行しているのに。。と思っているかもしれません。
しかし、以下のようなシチュエーションが発生しているんじゃないでしょうか?
■ボラティリティ(株価の上下の振れのことですね。)の高い銘柄を選んでしまい、大幅な下落に慌てて「狼狽売り」をしてしまう。
■底値拾いをしようとして底で買ったつもりが、さらに下落してしまい、「そんなはずはない。」と待っているうちに急落して「塩漬け」になってしまう。
■株価が急上昇したので慌てて買ったら高値掴みで急落した。
といったようなことが。
これらは買いの戦略が売りの投資の格言を実行するのに適していないことを表していると思います。
上昇する下地(例えばファンダメンタルやテーマ性、材料など)の裏付けがあり、しっかりとした上昇トレンドの調整局面で底が堅いことを確認し、上昇することを自分が納得した時に買う。
株価の上昇する蓋然性(確かさの度合い)が高い時に買う。
これが格言を実行するうえでの大前提になると思います。
こういった下がりづらい銘柄、下がりづらい状況の時に買った場合、下がるといっても一時的でその後は上昇が継続すると考えられる訳です。
その時に初めて「利食い千人力」「損小利大」の格言が輝いてくると考えています。
売りのタイミングの話なのに、買いの話になってしまいました。(^-^;
私が実践する買いのタイミングについては以下の記事を参照していただければと思います。
AS Wind流投資手法 株の買うタイミング その1・基本のチャート形状「取っ手付きカップ」
売りの格言を実現するためのルールとは
上で述べた正しい銘柄を正しいタイミングで買った場合、格言を実現するうえでオニールが定義しているのは以下のルールです。
■CAN-SLIMで適切な選択をした銘柄がピボットポイントをブレイクした場合、-8%より下がる可能性がほぼないため損切りは-8%とする
■含み益が+20%を越えたら利益確定をする
「利食い千人力」「損小利大」の格言のとおりの堅実な売りの戦略ですね。これをずっと続けていけば、自動的に資産が増えていく訳です。
しかし、実際のCAN-SLIM銘柄はさらに上昇することを見込んでいるので、+20%の利益確定というのではもったいないと思っています。【欲張りですが。(^-^;】
そのため、私の方法では3段階の利益確定方法のルールを定めています。また、損切りについても-8%の損切りは最悪の損切りタイミングとしており、それよりも前に上昇の勢いを失ったと思われるタイミングを見計らって早めに売却する方針としています。
次は具体的なルールについて述べていきます。
売りの戦略と売りのタイミング
まずは「取っ手付きカップ」で買いをした場合の流れを確認しておきます。図を参照しながら以下説明します。
含み益20%未満の売りの戦略
最も神経を使うのがこの期間です。利益確定の目標「含み益+20%以上」を達成するかしないかについて日々の株価を見ていきます。特に急落の動きがないかを見ています。
私の買いの戦略では、「調整の雲」もしくは「ピボットポイントのブレイク」が買いのポイントとなっています。
調整の雲の中で買った場合
「調整の雲」の中で買った場合、ブレイク前の状態で仕込んでいますので、損切りラインは-8%よりも厳しい基準で判断することになります。
それは「調整の雲」と呼んでいるピボットポイント後の振い落しで形成された底値のラインが最終的な損切りのポイントとなります。
「調整の雲」の中でも上昇下落の流れがありますが、ブレイクに向かっていくときは「10週移動平均」に沿って上昇していくことが多いです。
従って「10週移動平均」がサポートとして機能しているかも重要なポイントです。「10週移動平均」が「調整の雲」の下限から上に離れている場合は、「10週移動平均」を損切りや利益確定の判断に使う場合もあります。
利益が出ても数%、損切りとしてはおよそ-3%~-5%になります。
ピボットポイントをブレイクした段階で買った場合
ピボットポイントをブレイクした段階で買った場合は、一度ブレイクしたピボットポイントを切らないことが上昇継続の判断基準となります。
仮にピボットポイントを切った場合ですが、この場合はオニールの損切りルール-8%を適用することになります。
この期間は我慢の連続です。基本的には週足で判断しますので、週の半ばで下げてしまった時は「狼狽売り」をしてしまうことがたまにあります。
しかし、「振るい落とし」の動きであることが多いので、余程の悪材料でない限りはホールドして下落が継続しないことを確認していくほうがいいと思っています。
含み益+20%以上の売りの戦略 その1「調整の気配」
買った銘柄が想定通り含み益+20%まで伸びてきたら、すぐに利益確定をするのではなく、「調整の気配」がでたら利益確定をします。せっかく伸びるとわかっている銘柄なのに利確するのはもったいないですからね。
「調整の気配」はいくつかの週足の形を判断材料にしています。
■前の週が陰線で引けた後、次週の始値が先週終値より下で始まった時
■前の週が上ヒゲの長い状態で引けた後、次週の始値が先週終値より下で始まった時
基本は上記をベースにしていますが、週途中でも下落の気配を感じたらすぐに利確をします。この際、全てを利確するのではなく、持ち株の50%程度を目安に利益確定をします。すなわち+10%の利確となります。
ここは「利食い千人力」の実現を最優先します。
この段階ではとにかく利益を確保することが目的です。半分利確することで+10%のバッファを得ることができ心に余裕ができます。
含み益+20%以上の売りの戦略 その2「利を伸ばす」
+10%の利益を得た後ですが、ここからは少し余裕をもって判断をしていきます。
基本的には前回ブレイクしたピボットラインより上での調整についてはそのままホールドです。
順調に上昇をしていった場合は、10週移動平均が押し目の判断となります。ここで反発すればまだ上昇の継続とみます。
週足実体で10週移動平均を切ったら、そろそろ潮時です。そのまま次週続落すると売り時だと思います。
ブレイクした銘柄はそのまま次の買いポイントとなる「上昇中の調整の雲」「平底型」「取っ手付きカップ」「Wボトム」を形成してくる可能性が高いです。
その時は買いのルールに従って買い増しを検討し利をさらに載せていく戦略をとります。
「損小利大」を最大限活かしていく戦略です。
一度ブレイクした株価の動きのイメージは以下の通りです。
ダメな売り方の事例と教訓
次に恥ずかしながらも売り方に失敗した事例を載せておこうと思います。「一時的な下落の恐怖」や「売り急ぎ」がもたらした悲惨な体験です。。
この二つのパターンは大きな利益が得られたにも関わらず売り急いだために得るものが少なかった例です。
まず前提となる買いの判断は間違っていなかったと思います。いずれも上昇局面を迎える直前の調整段階で仕込み、底堅い動きを見せていました。
最初の事例ではテーマ化して上昇しましたが、途中で上ヒゲを伸ばして終了したため、次週以降の下落が頭にチラついてしまい利益確定してしまいました。
日記を見ると「+17%の利益で満足した」と書いていましたが、その後実に+100%以上上がったのです。損はしていませんが、損した以上に損した気分。。分かりますよね。(^-^;
2番目の事例もつい先日(2020年1月)の話ですが、決算でファンダメンタルに不安な要素が生じたことと、ボラティリティが上昇し株価の乱高下に含み損になるリスクを感じて買値で撤退しました。
ルールを無視した、正に「狼狽売り」です。
ファンダメンタルの不安要素は四半期利益の前年度比下落のことを言っていますが年間利益は増加の方向。微妙な判断でしたが株価はプラスに働きました。
ファンダメンタルの悪化が株価の下落に直接結びつくものではないことはブログでも書いてて自分でもわかっているはずなのに冷静な判断ができなくなっているんですね。そちらの記事は以下のものです。
好決算で下落?悪決算で上昇?決算後の株の動きを読む その1 UUUM【3990】
ルールを遵守していれば調整の雲を割っていないのですから、ホールドで様子を見ることもできたはずです。
結果的にその後ブレイクして、ホールドしていれば含み益が+16%ある株価まであっという間に上がってしまいました。。
今後株価が上昇していくかはまだわかりませんが、チャンスを逃したことに変わりはありません。
しっかりと自信をもって正しい位置で買った銘柄は、売りの戦略(利確、損切り)もしっかりと建てたルールに従うべきだというのが教訓です。
ただし、建てた戦略が正しいことが基本です。
株式投資を実践していく中で、戦略に修正が必要だと思われるパターンは必ず現れます。その時にしっかりとプロセスと結果を検証し、仮説をたてて立証し、ルールの変更や追加をしていく。
この繰り返しが重要だと思います。
まとめ
最後にこれまで述べた売りの戦略について、ポイントをまとめてみました。
1.「利食い千人力」「損小利大」を実現するには正しい買いと売りがセットである
2.オニールの売却ルールは利益確定は+20%、損切りは-8%である
3.「調整の雲」で買った時の損切りは「調整の雲」の下限を切った時が最終ライン
4.「調整の雲」の中では「10週移動平均」を損切りに使う場合もある
5.「調整の雲」で買った時の損切りは-3%~-5%下落
6.「ピボットポイントのブレイク」で買った時の損切りは-8%下落
7.「振い落し」の動きが入るため損切りは週足実体で判断(ヒゲは考慮しない)
8.含み益+20%を越えたら「調整の気配」が入った時に持ち株の半分を利益確定
9.「調整の気配」による利益確定は動きを察知したらすぐに実行
10.利益確定によって心の余裕が得られる
11.「調整の気配」による利益確定後はピボットポイントより上はホールド
12.上昇中は10週移動平均が押し目の判断となる
13.上昇した銘柄が次の買いポイントを形成したら買い増しを検討
14.市場の動きに惑わされず、売り方のルールをしっかりと遵守
15.実践を通して戦略が間違っていた時は繰り返し修正していく
最後に「頭と尻尾はくれてやれ」という格言もあります。
私は、その時その時の欲や焦りに惑わされずにしっかりとルールを守れ。という含みもあると思っています。
みなさんがこの記事を参考にして自分なりの売りの戦略・売りのタイミングの分析手法を確立してもらえば幸いです。