CAN-SLIM投資法

「CAN-SLIM」のM(Market Direction) -株式市場の方向-

投稿日:2019年3月6日 更新日:

「CAN-SLIM」は「オニールの成長株発掘法」(パンローリング)で詳細に述べられている銘柄選択のポイントになるキーワードの頭文字を集めたものです。今回は最後の要素「M」についての概要と実際の投資における活用方法について説明します。

MはMarcket Direction、市場の方向です。オニールはこのMの項目が最も重要である。と捉えています。どんなに良い銘柄を選んでも市場の流れに逆らったらよい結果は得られません。この章では、市場の流れが上昇しているのか下落しているのか流れを掴むための具体的な手法や市場の流れに影響を与える要素にはどのようなものがあるのかについて述べています。最も重要な項目ということで内容も多く扱う範囲も広くなっています。

市場の流れを掴む者が投資の勝者となれる

CAN-SLIMの7つのルールのうち6つを学んできた。しかし、その6つの条件すべてを満たす銘柄を見つけても、マーケットの方向性を見誤れば意味がない。市場が下向きのときは、保有している株式の4銘柄のうち3銘柄は平均株価と共に真っ逆さまに下落する。(中略)だからこそ、今が強気相場(上昇トレンド)なのか弱気相場(下降トレンド)なのかを正確に判断できるような、実績と信頼性のある分析方法を学ぶ必要があるのだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

如何にCAN-SLIMの6つの項目でEPS成長率が圧倒的に高く、魅力的な新商品を展開している新興企業で、他の銘柄よりも株価の動きが力強く、上昇が見込める銘柄があったとしても、市場が下降局面では信じられないような下落をしてしまいます。ファンダメンタルだけで銘柄を選んでいるとついつい見逃し勝ちなのがこの点です。

市場はファンダメンタルで動いているのではなく、投資家の需給で動いています。いくら良い銘柄でも市場の動きを無視して投資することは「焼け石に水」の状況とさして変わらないのです。

マーケットが天井や底を付けることを見極められるようになれば、投資という複雑な勝負の半分を制したことになる。しかし、プロや初心者を問わず、ほぼすべての投資家にこの重要な投資技能が欠如しているのも事実である。ウォール街のアナリストは、2000年の市場の天井、特にハイテク銘柄の主導株の天井を正確に言い当てることが一度もできなかった。2008年も同様である。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

複雑な金融工学や様々な専門家を揃えた投資のプロと言われている人は世の中にたくさんいますが、なぜ暴落を避けることができないんでしょうか?

機関投資家に限っては顧客の資産を預かって結果を出さなくてはいけないということもあり、常にフルインベストの状態になっているということも原因としてはありそうです。それにしても、10年に一度発生するという暴落の影響を毎回モロにくらっているのは事実です。

プロの投資家やブローカーですら、そのような必須の技術を習得している人は非常に少ない。多くの投資家は、他人に頼って投資判断を下している。そういった相談役や助言者たちは、マーケット全体がリスクの高い下落局面に入ったと判断できるような信頼性のある一定のルールを持っているだろうか?

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

補助的な指標には頼らないほうがよい。タイミングを正確に測れるという実証はどこにもないからだ。30~50種類にも及ぶさまざまなテクニカル指標や経済指標が存在するが、これらを凝視して市場がどうなるかの意見を述べるようなニュースレター発行者やテクニカルアナリストや投資戦略家に聞いても、時間の無駄になるだけである。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

投資家(あなた)はどのように投資判断をしているでしょうか?

人によって使う指標は違えど、なんらかの加工された情報を基にして個人的な見解や感情に頼って判断していると思います。

しかし、それは間違いだとオニールは言っています。

われわれはかなり前にマーケットの方向性を探る手法を発見し、それを発展させてきた。投資で成功するためには非常に重要な要素なので、これを理解して日々応用できるようになるまで本章を何度も読み返し、今後の投資に生かしてほしい。これを習得すれば、将来大きな弱気相場が訪れても、ポートフォリオの30%~50%を失うような状況に陥ることはけっしてないはずだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

ここからオニールのマーケットの方向性を知るための方法について述べていきます。言っていることは極めてシンプルです。ですが、この本質を理解し取り組んでいる人が少ないからこそ、暴落から免れることができないのです。

主要な株価指数を注意深く観察する

マーケットの方向性を判断する最善の方法は、主要な平均株価3~4種類の日足チャートで価格と出来高が日々どのように変化しているかを注意深く観察し続けて、チャートの示すマーケットの方向性を読み取ることである。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

マーケットについて何か学びたければ、主要な株価指数を注意深く観察してそこから学ばなければならない。そうすることで、市場平均が天井や底などの重要な転換期にさしかかっていることを見極めることができるようになり、その正しい知識と大きな自信を十分に生かせるようになるのだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

オニールが述べていることは拍子抜けしてしまうぐらい当たり前のように感じてしまいます。ですが、この当たり前のことを実行することは実に地味でなおかつ面倒くさい作業です。

私が日々の投資日記で実施している市場分析は、この教えに則って毎日記録し、わからないことは本を開いて内容を確認しながら動きを分析したうえで結果を検証するという作業によってこのスキルを身に着けることを目的にしています。

ブログとして発信して皆さんと共有しているのでなんとなくモチベーションが維持できていますが、これを黙々と一人で続けるというのは、精神的に相当つらい作業です。。

しかし、毎日観察しているとわかることですが、確かにマーケットの方向性を判断するためには、日々の観察は欠かせないことだと感じてきています。

次はなぜ主要な株式指数を見ることが大事なのかについてです。

物事の真相を知るにはその対象そのものを見る

市場の動きにはいろんな思惑や社会的、政治的、天候、災害などあまりにも多くのパラメータが存在しており、何が影響するかは起こって見なければ分かりません。

失業率やGDPなどの経済指標が相場の方向性を決めると思っている方もいると思います。しかし株式市場は常に景気を先行して上昇、下降し始めます。従って経済指標を参考にしていては既に乗り遅れている可能性が高いのです。

オニールはそれらを見越した上で未来を予測するのではなく、投資家が判断した結果が値動きや出来高に反映されるので、主要な市場指標を常に観察して値動きや出来高から投資家の動向を察知し市場の方向性を掴むことが重要だと述べています。

ここには重要な教訓がある。物事の真相を究明しようとするならば、その対象を自分の目で注意深く観察して分析する必要があるということだ。トラについて学びたければ、トラを取り巻く気候や植生、あるいは丘の上のほかの動物を見るのではなく、トラそのものを自分の目で見るのだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

上記に上げたトラの例でもあるように、市場の動きを知るのに必要なのは経済動向でも毎日のように発表される経済指数でもなく、とにかく市場の動きを毎日観察して分析することだということです。

上記に関するもう一つの逸話として、魚に関する論文の話もでてきます。教授から魚に関するレポートを書けと言われた学生は図書館で魚のことを調べてレポートを書きますが、教授は全て破棄してしまいます。それはなぜか。。

続きは以下の記事をご覧いただければと思います。

オニールの金言3・魚に関する論文

「投資」となるとどうしても難しく考えてしまい、金融工学や複雑な指標を使いたくなります。しかし、見るべき相手を間違えてしまっては本質は見えてこないということです。

投資に関していえば、あるのは過去の株価と出来高です。これを分析することが市場の流れを見極める本質だということです。

マーケットを「自分」で毎日分析する

マーケットの方向を知るには、主要な指数を毎日のように観察して分析しなければならない。市場の今後の動きを人に聞くなど、もってのほかだ。日々の市場の動きを正確に読み取る力を自分で身につけるのだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

ここまで見てきたように、市場の動きを掴むということがオニールにとって如何に大事かということがわかったきたと思います。

ところが、自分の投資スタイルを考えた時、果たして市場の動きを加味して投資判断している人がどれだけいるでしょうか?

自分が投資したいと思う銘柄のチャートは見ると思いますが、市場の動きを中心において投資している人はほとんどいないと思います。

理由はなんとなくわかります。

「そもそも市場の流れなどどうなるかわからないし、いろんな投資家やアナリストが出している予想も当たったり当たらなかったり。。。気にしていたらいつまでたっても投資ができない。結局は個別の銘柄で動き違うし、市場の動きはとりあえず参考になりそうな意見と、指標をいくつか決めて判断材料にしとこう」

という状況だと思います。

自分自身がそうでしたので。(^-^;

ここに大投資家となったオニールと我々の大きな違いがあるのではないかと思います。

市場の流れが投資に勝つためのポイントであり、ここにオニールが市場の流れを掴む方法を書いてくれている。

自らの手でしっかりと市場を分析し、投資判断のメインに据えて活用することが勝つ投資家になるための最大のポイントだと思います。

弱気相場では、株価は寄り付きで強く、引けで下落する傾向がある。強気相場では、寄り付きで弱く、引けで上昇する傾向がある。トレンドの転換はほんの数日の間に起こることがあるため、市場平均株価は毎日観察しなければならない。これらの主要な株価指数をうまく利用すれば、より直接的で実用的、そして効果的にマーケットの動向とその方向性を判断できる。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

自分で分析した内容から市場の方向性を掴み、それに基づいてCAN-SLIまでで選定した銘柄に集中投資をする。それによって、はじめてCAN-SLIM投資として完成するのだと思います。

具体的な分析手法について

ここから先は具体的な分析手法について述べていますが、それぞれの手法については一つ一つの内容が多いため別の記事で紹介していきます。ちょっとづつ記事を増やしていきますので時間がかかりそうです。

大事なポイントですが、ご容赦ください。。。

まとめ

七つ目の要素Mのポイントです。

 1.CAN-SLIMの6つの条件を満たす銘柄でも、M(市場の方向性)を見誤れば意味がない
 2.市場の方向性を知るためには日々の株価と出来高の動きを観察し分析すること
 3.市場について何か学びたければ、主要な株価指数を注意深く観察しなければならない
 4.市場の流れを見極める本質は過去の株価指数と出来高を観察することだ
 5.補助的な指標には頼らないほうがよい

繰り返し出てきますが、市場を自分の目で観察し分析することが大事です。

最後にオニールの締めの言葉です。

複雑だが極めて重要な本章のまとめ―マーケット全体の平均株価と出来高の日々の変化と、市場を先導する個別銘柄の動きを学び、それらを読み取る方法を習得せよ。ひとたび正しく行う方法を覚えてしまえば、素人やプロを問わずどんな投資家の個人的な意見にも耳を傾ける必要はなくなる。そういった無知の塊のような意見は、損失を膨らませるだけである。もうお分かりだろうが、市場の将来の動きを予測したり言い当てることが株式市場の熟練者への道ではない。過去数週間で実際に市場で何が起こって、現在は何が起こっているかを知って理解することが正しい道なのだ。

ウィリアム・J・オニール 「オニールの成長株発掘法第4版」より

以上となります。

他の要素は以下よりご覧ください。

1.「CAN-SLIM」のC(Current Quarterly Earnings) -直近四半期利益-

2.「CAN-SLIM」のA(Annual Earnings Increases) -年間利益の増加-

3.「CAN-SLIM」のN(New Products,New Management,New Highs) -新製品、新経営者、新高値-

4.「CAN-SLIM」のS(Supply and Demand) -株式の需要と供給-

5.「CAN-SLIM」のL(Leader or Laggard) -主導株か停滞株か-

6.「CAN-SLIM」のI(Institutional Sponsorship) -機関投資家による保有-

7.「CAN-SLIM」のM(Market Direction) -株式市場の方向-


お薦めの本

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